よろずを継ぐもの

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聖護院八ッ橋総本店「カネール」

お菓子の史
第12話
2023.10.6
皆さんの京都の定番土産と言えばなんですか⁉私は阿闍梨餅や千寿せんべい、最近では京ばあむや茶の菓などをいただくことも多いです。しかし、修学旅行で何度も訪れた京都で、子供も買う昔からある定番中の定番と言えばやはり八ツ橋ではないでしょうか⁉
「そうだ 京都、行こう。」というキャッチコピーで一世を風靡したJR東海のCMがふとした瞬間思い出されるとき、私の心のどこかで京都を欲しているな…と思うんです。学生の頃から地理や歴史が大の苦手で、興味が持てるもの以外何を聞いても覚えられない…そんなんですから学生時代はさっぱりあきらめていましたが、今やスマホの中にすべてある!気になれば、わからなければその瞬間調べることができる!それはもう、脳機能の退化まっしぐらな私です。
京都と言えば言わずもがな、日本有数の歴史的建造物や寺社仏閣が立ち並び、日本古来の文化が今なお息づく人気の観光地です。日本の歴史に興味のある観光客が世界中から訪れる街。でも最近、京都を欲した時に気張らずにふらりと行っても良いのではないか⁉なんてことを思い始めました。「鴨川の河川敷で地元のカップルのようにただただぼーっとしてみたい」とか、美味しいお店にランチを食べにとか、おしゃれなコーヒー屋さんに一杯だけ飲みに行くだとか。構えず、気負うことなく、ただ何となく京都をチャージしに行くみたいな感覚で。

聖護院八ッ橋総本店「カネール」

思いつきの京都でも、やっぱりお土産選びは楽しい

そんな風に気軽に、ちょこちょこ京都へ行く機会が増えているいまの私ですが、やはり外せないのは誰にあげるのかはわからないけど、とにかく楽しいお土産選びです。目新しものを見つけては心が躍り、インスタで気になったお土産を買いに少し足を延ばせばわくわくが止まりません。
だけど、そんなお土産わくわくスイッチの中で、どっしりと構える定番中の定番のあれが、いつも薄目でこちらを見ているのです。
それが八ツ橋!修学旅行で京都に来た中高生時代は「生八ツ橋」の存在しか認識していなくて、そしてまだまだ歯ごたえの良い、硬いお菓子が好きだという自覚も芽生えていなくて、柔らかな生八ツ橋を家族に買って帰ったっけ。でも「生八ツ橋を焼いたもの」である八ツ橋は生八ツ橋よりだいぶ先輩です。1960年ごろから登場したらしい生八ツ橋は今となってはあんこのみならず、果物やチョコレートまで包むようになっていますが、一方(焼き)八ツ橋はと言えばその歴史は諸説あるとのことですが元禄の時代からという説が多く、いぶし銀といった佇まいではありませんか。

聖護院八ッ橋総本店「カネール」

カネール…フランス語で肉桂(シナモン)を指す

そんないぶし銀、八ツ橋の進化バージョンをこの前発見してしまいました。いつも通り自分用に袋にバサッと入っているやつを買おうとしたところ、なんとなくその棚の上におしゃれなパッケージが並んでいるのが目に入りました。
薄く、そして細く巻かれた八ツ橋。いかにも香ばしそうな、食感の楽しそうな一品で、味はベーシックな物っぽいという事で今回はこちらを購入して帰宅しました。
早速開けてみると八ツ橋同様、シナモンの良い香り。そして薄く巻かれたスティック状の八ツ橋がたくさん入っていました。がりがりっといった噛み応えが最高の八ツ橋はそのままに何とも上品ないで立ちで、シナモン好きのあの方に是非差し上げたい!と思いました。

聖護院八ッ橋総本店「カネール」

歯ごたえ以上に魅了するこの形状

確かに香りもさることながら、見た目も樹皮を思わせる薄い生地と茶褐色、ぱっと見シナモンそのもののような商品ですが、この細長い形状を見ると私は別のものを連想してしまいます。
それはむかし駄菓子屋で売っていた「ココアシガレット」です。ハッカの味が少しするので子どもながらに大人の味だなと思っていましたが、とりあえずこれを買ったら(もしくは1本もらったら)みんな人差し指と中指ではさんで葉巻煙草を吸うジェスチャーをするのがお決まりでした。いつの時代も子供は大人の真似をしたいものですね。ちなみに時代は変わり2018年には電子タバコを意識したmyCOS(マイコス)という商品まで販売されているらしいです。年齢的にはとりあえず大人になった私ですが、シナモンは大好きだけどハッカの良さがわかるにはまだまだ早いようです…。

というわけで、誰も見ていない隙にカネールを人差し指と中指ではさんで、空気を吸ってみたり、灰を落とすジェスチャーをしてみたり…ひと通り楽しんだところで、ごちそうさまでした。
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