よろずを継ぐもの

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ヒガンバナ

花鳥風月
第4話
2023.10.2
暑さ寒さも彼岸まで(冬の寒さは春分3月20日前後頃まで、夏の暑さ残暑は秋分9月20日前後頃までには和らぎ、凌ぎやすくなる)とはよく言ったもので…と言いたいところだが今年の暑さは驚きをかくせないものでした。お彼岸が過ぎても「氷」の小さな旗が店前に揺れ、夏の常連アイテムもしまい込むにはまだ少し勇気がいりそうです。
暑かった夏が終わり、残暑だなんだといっている間にお彼岸もお月見も終わっていました。しかし季節が確実に進んでいる事を、道端にすっと伸び始めたヒガンバナの花茎が教えてくれました。
漫画『彼岸花の咲く夜に』やアニメ『リコリス・リコイル』がきっかけで、秋に道端に咲くヒガンバナが最近気になっていて、昨年家の周りに咲くポイントをチェックしていたのですが、ついこの前まで何もなくて、「今年は咲かないのかな⁉」と少し残念に思っていました。が、気がついたら昨年咲いていた各ポイントにいつの間にかヒガンバナが咲き始めているではないですか。
本当に先週くらいまでは何もなかったのに…と不思議になって調べると、ヒガンバナの花茎はものすごいスピードで伸びるんですね。地上に顔を出してから1週間ほどで花を咲かすそうなので、ついこの前まで何もなかったという私の記憶は曖昧なわけではありませんでした。

ヒガンバナ
哀愁漂う繊細な美しさに魅了される

花の名前からも感じられる少し寂し気な雰囲気が漂うヒガンバナ。細長い放射状にのびたヒガンバナがかたまりで咲いていると、一気にそこだけ秋を感じます。夏が過ぎもの悲しさを感じる秋、徐々に紅葉がはじまり、じきに寒さに首をすくめて歩く冬が来る…そんなイメージに包まれるのです。ヒガンバナと言えば赤い花のイメージが強く、花言葉は「情熱」「独立」「再開」「悲しい思い出」など。お墓の近くに咲いていたりするイメージから、なんとなく暗い、怖いというイメージを持たれがちですが、白は「思うはあなた一人」、黄色は「深い思いやりの心」「陽気」「元気な心」など色によっては心温まるような花言葉も見られます。ちなみに大人気漫画「鬼滅の刃」に出てくる青いヒガンバナはどうやら実在しないそうです。
ヒガンバナ
繊細な美しさとは裏腹に

ミステリアスなヒガンバナがなんとなく暗い、怖いというイメージを持たれる理由のひとつに「毒=死」を連想させるというものもあるそうです。
ヒガンバナは花、茎、球根すべてに毒があるといわれている有毒植物です。昔から墓地や土手、田んぼの畦に植えられたり、壁土の中に塗りこまれたり、球根から作ったデンプン糊がふすまの下張りに使われたりもしてきました。これらはいずれもネズミ・モグラなどの小動物が穴をあけたり、ものをかじったりする害を防ぐためと言われているそうです。昔から日本人の生活に密着した植物だったことがうかがえて、先人たちの生活の知恵に感嘆するばかりです。だからこそ日本全国で1,000を超える方言、異名があるというのも頷けますね。

ヒガンバナ
ヒガンバナ科ヒガンバナ属

学名の属名リコリスは、ギリシャ神話の女神・海の精であるネレイドの1人リュコーリアス(英語)から、種小名ラジアータは「放射状」の意味で、花が完全に開いた時に放射状に大きく広がっている様子にちなんでいるそう。
主人公が毒性のあるヒガンバナに火をつけて吸う姿がアイキャッチとして話題となった『リコリス・リコイル』は学名からきていたんですね。(※前述のとおり、ヒガンバナは猛毒を含むため「絶対に真似しないで」との注意喚起が出され、その後、同話のアイキャッチが差し替えられた)
今回いろいろ調べていて日本各地にヒガンバナの名所なるものがあることを初めて知りました。さらにそんな名所で見ごろの時期には「彼岸花まつり」が開催されるところも。旅行気分で名所を巡ってみたいと思います。

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