よろずを継ぐもの

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青森 BUNACO(ブナコ)

もの作りの現場から
第3話
2023.8.8
エシカル消費やSDGsといったキーワードが毎日のように飛び交い、今まさに環境配慮や様々な立場の人、生物の多様性を認める社会へと進みつつある私たち。
日常生活においてもお買いものや、ものを使う時の判断材料のひとつとして、価格や見た目の美しさだけではなく、そのもののストーリーが重要視されつつあります。
秋田県北西部と青森県南西部にまたがる広大な山地帯、白神山地。世界遺産にも登録される、人の影響をほぼ受けていない世界最大級のブナの原生林には、多種多様な動植物が生息し貴重な生態系が保たれています。まるでスタジオジブリの描くようなその豊かな自然環境を次世代へと引き継いでいくため、白神山地ではエリアが区切られ手を入れすぎず自然を守るためのルール、入山マナーの徹底が呼びかけられています。そんな白神山地をはじめ青森県には昔からブナの木が豊富だったそうです。「天然のダム」と呼ばれるほど保水力に優れたブナ。その特性からねじりや狂いが生じやすく、建築材として活用されるようになったのは乾燥技術が発達した比較的最近の事だとか。そのため、枕木や薪などにしか使われず、「役に立たない木」として戦後は大量に伐採されていました。

青森 BUNACO(ブナコ)

青森のブナを活かしたいという想いから

1956年青森のブナを有効活用する為にブナコの技術は発明されました。
今回お伺いしたのは白神山地の玄関口、西目屋村にあるBUNACO西目屋工場、職人の方々の製作風景を見学し、私も製作体験をしてきました。
「BUNA+COIL」=BUNACOという名前の通り、ブナを1㎜のテープ状にしてコイル状に巻き、バウムクーヘンのようになった平面の巻き板を押し出して成型するという技法です。くるくるとブナのテープを巻く人、お茶碗を使って成型する人と製作工程を見学していくと、職人さん達のその滑らかな動きから、少しだけ、ほんの少しだけですが…結構簡単そう⁉と思ってしまいました。が、そんな訳ありませんね。コイル状に巻く際に油断をするとばらばらとほどけてしまいますし、成型の際も押し出しすぎると巻きが外れてしまいます。職人の方にお願いしてグローブを外して素手を見せていただきましたが、強く押さえながら巻いている部分、それが一目でわかるほど手のひらが固く厚くなっていました。



青森 BUNACO(ブナコ)

愛着のわく製作体験

職人さんは涼しい顔をして、あんなに簡単そうに成型していたのに…そんな事を思いながら一生懸命手に力を込めて、汗ばみながらひと押しひと押し慎重に成型作業を進めていきました。隣から「きゃぁ!!」と悲鳴が聞こえ、ちらりと見るとなんとコイル状の巻きが外れてほどけてしまっていました。ちょうど「もう少し深くしようかな…どこまでいけるかな…」と思っていた私は急に怖くなって「完成!」とつぶやき、裏面にサインをして製作体験を終えたのでした。体験後に塗装・仕上げをしてもらい後日自宅に送られてきた私作、私のための器。「器」ではありますがしばらくは目に入るところに飾っておくことにしました。こういう製作体験も旅の醍醐味ですよね。

青森 BUNACO(ブナコ)

旧西目屋村立西目屋小学校の廃校活用

BUNACO西目屋工場は郷愁を誘う懐かしい建物に跳び箱や鉄琴…そしてひときわおしゃれなBUNACOのランプシェード。連載「もの作りの現場から」の中でも1番心をほわほわと温めてくれる…そんな施設でした。もともと視聴覚室だった部屋はブナコのスピーカーの試聴室になっていたり、給食室だったところにはおしゃれなBUNACOカフェがあったり。小学校の懐かしさを最大限残しながらスタイリッシュな製品の製作現場となっていて、とても魅力的な場所となっていました。
空き校舎になることが決まった時に村長から「働く場所が少ない西目屋村にものづくりに触れられる場所が身近にあれば、村で働きたいと思う子どもたちが増えるかもしれない」と協力をお願いされたというブナコ株式会社 代表取締役の倉田昌直氏。BUNACOの高いデザイン性が日本だけでなく海外でも高く評価されている一方で倉田氏は周辺の埋もれてしまっている資源活用やお年寄りの生きがい創出にまでもその力を注いでいるそうです。BUNACOカフェで提供されているモンブランは周辺の方々が拾った栗を買い取ったもの、また養蜂家との取組みにより自然豊かな西目屋村産のはちみつを使ったメニューも。全国のはちみつ好き、コーヒー好きの方は是非BUNACOカフェの「西目屋産はちみつコーヒー」を飲んでいただきたいです。このコーヒーを飲みにだけでも明日青森に行きたいくらい私のお気に入りの一杯となりました。

自然と共存を目指し、人と人とが手を取り合って、笑顔が生まれるそんな村。畑はきれいに手入れされ、若者が暮らし、生き生きと働いているのだろうと、そう思わせる風景でした。

今回訪問させていただいたBUNACO工場見学・製作体験はこちらから


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