よろずを継ぐもの

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三万石「ままどおる」

お菓子の史
第9話
2023.3.11
まま まま ままどおる~ ミルクたっぷり ままの味~

3月11日をむかえる度に思い出すのは、ままどおるのCM曲と夏休みの思い出の数々。
小さなカエルを手のひらの中につかまえた時の感触、からっからに乾いた洗濯物、いちめん緑の田んぼ、夜の牛蛙のおどろおどろしい鳴き声、手持ち花火の火薬の匂い、おばあちゃんのしわしわの笑顔、おじいちゃんが親戚の集まりを喜んで小さなグラスで飲むビール…

東日本大震災から12年が経ちました。あのころ東京に住んでいた私は、ひとり自宅で仕事をしておりました。急な揺れに気が動転しベランダに出たものの、ベランダが崩れたらどうしようと思い、今度は毛布をかぶりバスルームへ、そのあと揺れが落ち着いたような、まだ少しだけゆらゆらしているような感覚の中、お財布と鍵を持ち部屋着に上着を羽織って、階段でマンションの下まで駆け下りていきました。それは知らない人にテレビのチャンネルを奪われるような、目の前の景色や日常という時間が瞬間的に切り替えられてしまう、そんな経験となりました。地震の多い日本に住んでいると、地震のニュース速報は日常のように目につきますが、大事無いようにと心を痛めながらも、その大変さを本当に身近な事と捉えていたかと言われると「わかります」なんて口が裂けても言えないと心の底で思っていました。東日本大震災の経験は私にとっては1番身近な災害で、この震災の余波のようなものを見て聞いて経験したからこそ、若気の至りで少々とんがっていた思考に大きな変化をもたらしたといっても過言ではないと思います。そんな事を思い出す3月11日にまつわる私の記憶です。

三万石「ままどおる」

ミルク饅頭を食べたときにわかるルーツ

博多通りもん、みるく饅頭 月化粧、母恵夢、ひよこ、ざびえる…全国各地の人気土産の中に共通するミルク饅頭系統の商品の数々。老若男女年齢問わず喜んでもらえる上に、だいたいが個包装、賞味期限もほどほどで、いわゆる「お土産マナー」をすべてクリアする鉄板中の鉄板だと私は思います。
しかしこれらのお土産をもらった人の食べたときの第1声、それはその人のルーツに深く影響されていて、転勤族は肩身の狭い思いをすることも。私はこの類のお菓子をどんな味?と聞かれたら決まって「ままどおるみたい!」と説明します。これは場所によっては全く通用せず、おそらく関西ならば「月化粧みたい!」というところなのでしょう。

三万石「ままどおる」

『サマーウォーズ』のような記憶の中で

そんなままどおるがお土産として販売されている福島は、間違いなく私のルーツのひとつだと思います。母方の親族が住んでいて子供の頃には従妹達が大集合、夏休みの度に両親が車で連れて行ってくれていました。いままであまり意識したことはなかったのですが、この年になって当たり前のように食べていた福島の味が恋しくなることが増えてきました。ぜんまいやわらび、ふきのとうなどの山菜はもちろん、秋刀魚で作るつみれ汁、相馬きゅうり漬、そしてお菓子でいえばままどおる。よくお墓参りの帰りには決まってままどおるを両手いっぱいに買って会社に持って行ったっけ。

三万石「ままどおる」

出来立てのままどおる 食べたことないけど

同い年の従妹と遊んでいる時に、ふと従妹が口ずさんだままどおるの歌。

「まま まま ままどおる~ ミルクたっぷり ままの味~ ままどおるのCM曲知らない⁉」と。

その時は知らなかったけど親戚の家でテレビを見ていると確かに流れていました。
優しい甘さの薄い皮とほろほろと口どける餡、外装の卵の黄味のような黄色に手書き風のままのイラスト。お母さんの優しさだけでできているようなすべてにおいて心地のいいお菓子そのままの曲です。
ところで勝手イメージなのですが、今までままどおるの「まま」は「お母さん」の事と当たり前のように思っていました。が、しかし。しかしですよ。「ままどおる」はスペイン語で「お乳を飲む子」を指すみたいです。今回調べてみて「え⁉そっち⁉」と今年1番驚いたポイントです。

ちなみにままどおるは、レンジで少し温めていただくとさらに美味しいです。出来立てのままどおるみたいな感じになるよと従妹が教えてくれてから家でいただくときには毎回そうしてます。ネットで調べてみると他にも冷凍保存して自然解凍してから食べたり、てんぷらにしたりとありましたので、次回チャレンジしてみようと思います。

震災以来、お墓参りに行けていないので、今年こそは福島へ行きたいなぁ。
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