よろずを継ぐもの

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金吾堂製菓「厚焼」

お菓子の史
第6話
2023.1.4
ちゃぶ台の上にお煎餅の入れ物‥お母ちゃんが横になってテレビを見ながらお煎餅をくわえて、お尻を掻いている。家にはちゃぶ台もお煎餅の入れ物もなかった気がするけど、そんな昔テレビで見たような光景を思わずふと思い起こさせる、まん丸の、さも香ばしい焼き色の、1ミリも湿気ることの許されない歯応え命のお煎餅。
日本国内にお煎餅数あれど、定番中の定番、醤油煎餅の中で私が1番好きなのが金吾堂製菓の「厚焼」です。いつから食べ始めたのかあまり鮮明な記憶がないのですが、なんとなく私の中で醤油味のお煎餅ブームが到来した時に、薄焼き、四角のモノ、ぬれ煎餅などあれこれ試した結果、生涯リピートするであろう私の中の定番煎餅として殿堂入りしていたのです。ちなみに歯応え重視派の私はぬれ煎餅なるものの魅力がわかりませんでした。多分20年以上食していないので、そろそろ再確認の意味を込めて挑戦してもいいかもしれませんが、次はさらに20年後になるかもしれません。

金吾堂製菓「厚焼」

お煎餅配り、会社に現る

直径10cmほどの美しい円形に程よい厚み、いかにも香ばしく焼かれた焼き色と焼いた際にふくらんだと思われるぷっくりとした隆起。もう見た目も完璧なんですよ、金吾堂さん。ただあえて心を鬼にしてひとつ言うのならば‥外装袋に1枚づつ個装で9枚入っているのですが、外装袋を開けた瞬間から湿気との戦いが始まるんです。数日ぐらいは大丈夫だと思いますが、気がつくと楽しみにとっておいたお煎餅が湿気って美味しさランクが下がっている。そんなガッカリ体験と自己嫌悪を繰り返し、もはや生鮮食品と呼ぶべき食べ物と認識した方がいい。そんな風にまで思っているのです。個装の袋が湿気を全く通さなければ、もう少しちびちび大切に、誰にもあげたりしないでこっそり1人で食べたいのに。なんせ外装袋を開けた瞬間、タイマーのカウントするイメージが脳内にへばりついて、せっかくの厚焼を美味しいうちに消化しなくてはというミッションに支配されてしますのです。
「少し固めですが私の大好きなお煎餅です」とみんなに配り歩く、会社の人たちにはきっとお煎餅配りの人と思われていることでしょう。

金吾堂製菓「厚焼」

食べ方もリズムのように

ここで私の厚焼の食べ方を詳しく解説させていただきます。
まず個装袋の口を切らずに、閉じたまま一口大に割ります。少し贅沢にひと口大6分割か、勿体ぶって小さめの8〜10分割のどちらかで。
歯ごたえとバリボリ音を存分に楽しんだら‥職場ではここまで。家では袋の中の細々したアラレ状の粒々も口の中に放り込み最後まで堪能します。
そして最後に、もう1枚食べたいなぁ‥いっちゃおうかなぁ‥明日まで我慢しようかなぁとか考えながら個装袋を細く畳んでちび結びにしたらご馳走様でございます。

金吾堂製菓「厚焼」

今風にいうとそれは推し活

そんな愛してやまない「厚焼」を販売する金吾堂製菓は1950年創業、東京都中野区にある米菓メーカー。
関東に住んでいた時にはそこそこのスーパーならほぼ確実に売っていたのですが、関西に引っ越して一時期食べれない時期がありました。帰省の際に買いだめしたり、送ってもらったりしていたのですが、そのうち全国展開のコンビニやスーパーでたまに見かけるようになり、今では安心して購入することができます。それでも売れなくては商品入れ替えになってしまう可能性がないとも限らない。見かけた際にはせっせと買って周りに配り歩く、お煎餅配りの日常は案外大変なものです。

それでもはじめて配った方がバリバリと目の前で食べてくれる様子を見たり「胡麻の風味が美味しいね」なんて言われたら嬉しくて嬉しくて。
私、金吾堂製菓に入社したいんでしょうか⁉︎ってな具合です。皆さんも是非お試しください。
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