よろずを継ぐもの

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亀屋良長「スライスようかん」

お菓子の史
第4話
2022.8.15
京都の老舗店といえば、他県のそれとは比べものにならないくらい、歴史が長いところが多いですよね。長年にわたり時代の変化、世代交代とともに進化しながら、守るべき技術を大切に受け継ぎ経営を続けておられるのでしょう。その揺るがない価値や質の高さに魅了されて何度も訪れたくなる土地、京都より革新的なアイディアで異例の大ヒットを飛ばしている商品をご紹介。
この商品と私の出会いはマーケットトレンドセミナーでのことでした。「売り上げの伸び悩みを抱えた定番商品も、視点を少しだけ変えたアプローチでヒットする」そんな事例として紹介されていた気がします。その後「老舗和菓子店、女将のひらめきで売り上げアップ!」といったようなかたちでテレビでも度々取り上げられています。背景としては、20代から40代の若い世代を中心に、洋菓子人気におされ和菓子離れが深刻化しているとの事。中でも昔ながらの羊羹の売り上げは落ち続けていたといいます。

亀屋良長「スライスようかん」

創業1803年の老舗和菓子屋「亀屋良長」

亀屋良長と言えば、百貨店のデパ地下でよく見る定番の和菓子屋さんというイメージでしたが、モダンなパッケージのこの商品、京都限定販売という事で、用事ついでに四条の本店へわざわざ買いに行ったのを覚えています。白い暖簾をくぐると整然とした店内でちょっと背筋が伸びる想いがしました。洋菓子店にはなかなかない、凛とした雰囲気のお店の緊張感が、若輩者の私にとっては非日常な感覚でどこか心地良い。スライスようかんだけでは申し訳なくて、定番っぽい和菓子もいくつか見繕ってそそくさとお買い物を済ませたものでした。

亀屋良長「スライスようかん」

羊羹の形状を変えて3年目で売り上げは1000倍!

パッケージを開けてみると、どこか見たことがあるような形状…そう、まるでスライスチーズ。フィルムにスライスされた羊羹、バターが包まれていて、ささっと食パンにのせてトーストすれば、いまや大人気のあんトーストが完成というこの商品。我が家であんこ好きは私だけなので、缶やチューブのあんこを買っても持て余すことが多く、冷蔵庫で冷えて固くなり扱いづらいのもどうしたものかと思っていたので、これは本当に便利。
さらにあんこではなく羊羹だからなのか⁉トーストすると少しぐつぐつして、とろりとした見た目が食欲をそそります。たっぷりとのせられたケシの実の香ばしさとトーストのカリッとした焼き目の食感もたまりません。

亀屋良長「スライスようかん」

そういえば、夏休みに祖母の家へ毎年行っていて、あちこちから集まるお中元に心躍らせた幼少期。同世代の従妹らとジュースやゼリーを美味しくいただいたっけ。その端に水ようかんがひっそりと鎮座していた気もするが、率先して食べたりはしなかったな。そんな私も今はめっきりあんこ好きに。
大人になるにつれ、食の好みが変わるとよく言うけれど、自分の食の好みが変わったのか、それとも食品業界の方々の弛まぬ努力と美味しい物への探求心により、美味しい物がどんどん増えているのか…。まだまだあんこ歴は浅く、美味しいあんこを求めてあれこれ試したいと思います。
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