よろずを継ぐもの

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新宿中村屋 あんまん

お菓子の史
第2話
2022.6.15
生まれ育った故郷の記憶を呼び覚ます…、大きな蒸し器からもれる湯気と甘い小麦の香り。家の斜め向かいにあった新宿中村屋の中華まんは私にとって忘れられない大好きなおやつでした。お小遣いを握りしめて横断歩道を渡り1人でおつかいに行ったドキドキ感まで美味しい味の記憶のひとつになっているのかもしれません。
実家が商売をしていたこともあり、私はとある街の商店街で育ちました。そこは今ではなかなか見かけなくなった古き良き商店街そのもの。お肉屋さん、お魚屋さん、八百屋さんにお花屋さん、文房具屋さん、本屋さん、家のお向かいはおもちゃ屋さん。真向いのおもちゃ屋さんのほんの数件となりには新宿中村屋の小さな店舗がありました。新宿アルタの斜め向かいに大きなビルを構える、あの新宿中村屋です。郊外の商店街に立つ小さな店舗でしたので新宿中村屋の直営店だったのか、どんな品揃えのお店だったのかなど詳しくはあまり覚えていませんが、コンビニエンスストアが家の近くにできるずっと前からあったそのお店の店先には大きな丸形の蒸し器があって、肌寒い季節は特に蒸し器からもれるあたたかそうな湯気が食欲をそそる…そんな情景がとても懐かしくてしかたありません。

新宿中村屋 あんまん

あなたのお気に入りは?

突然ですが皆さん中華まんはお好きですか?コンビニやスーパーで手軽な物を買う、中華街や中華料理店の本格的な物を買うなどいまや楽しみ方も豊富。さらに今回注目したいあんまんは、中華まんの中でも1番種類が豊富で、メーカーごとに味わいに差があると私は思っています。つぶあん派、こしあん派でまずは大きく好みがわかれますが、前述の新宿中村屋のあんまんは黒ゴマペーストの風味が特徴の中華こしあんで、他の物とはあんの種類が全くの別物。そして私は蒸し器で丁寧に温められた中華まんをあたり前のように食べていたので、コンビニのやや時間が経過したよれよれの生地が苦手です。あんまんが大好きなのに手軽なコンビニのあんまんはいただけない、そんなこだわりとともに成長して大人になってしまいました。
私の中であんまんとは、「張りのある、ほど良い硬さの生地に、しっとり熱々の黒ゴマ風味の中華こしあん」という物として認識されているのです。習い事帰りに食べたあの味、試験勉強の合間に友だちと食べたあの味(その友達は新しいもの好きでいつもピザまんを食べていた)、時にはスタンプカードにスタンプをためていたっけ。

新宿中村屋 あんまん

地域によって取り扱いが異なるようですがセブンイレブンでは新宿中村屋の中華まんを扱っています。セブンイレブンのあんまんがお好みの方でしたら他のコンビニで扱っている他社のあんまんとの違いにお気づきかもしれません。実家近くでは中華まんシーズンともいえる冬場にはスーパーに並ぶこともありましたが私の今住んでいる地域ではお目にかかることがなく、コンビニで温められたあんまんは手出ししないと決めているので身近な存在ではない今や憧れの人のような感覚です。
とはいえ一定の周期でつい思い出しては食べたくなるため、通販でちょっとリッチな新宿中村屋天成餡饅を自分へのご褒美と称して注文したり、東京へ行ったついでに購入して帰ったりとほどほどにあんまん欲を満たしているのでした。

新宿中村屋 あんまん

というわけで、私いち押しの新宿中村屋のあんまん、いわゆるつぶあん、こしあんの物とは別物なので、月餅などのあんが好きな方には是非1度食べてみてほしいと思います。本当に美味しいので食べすぎには気を付けたいところですが、もう1点だけ注意点が。かなりねっとりとしたあんの為、想像以上に熱く口の中をやけどしがち。まわりの生地をちぎりあんをすくうように慎重にいただくことをお勧めします。
そして最近通販サイトで発見したのですが、新宿中村屋の中華こしあん好きに朗報が。「黒ごま香るなめらかあん」という瓶詰めの商品が販売されており、パンやアイス、おもちなどに中華こしあんを心ゆくまで楽しめる1品とのこと。とはいえ私の中ではあんまんの生地と中華こしあんが最強コンビ、長期保存ができるあんの瓶詰めのベストな活用法はまだまだ模索中です。本日のおやつは最近マイブームのところてんに黒蜜代わりに黒ごま香るなめらかあんをかけてみようかと思います。
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