くらしのこみち

【切子工房昌榮】一口ビールグラス

今月のお道具
2023.7.31
【切子工房昌榮】一口ビールグラス
暑い夏に恋しくなるのが、枝豆と冷たいビール。
天満切子の一口ビールグラスを使えば、いつもの晩酌が特別な時間になりそうですね。

先日、天満切子の工房【切子工房昌榮】さんにお邪魔してまいりました。昌榮の職人である西川さんは、天満切子の生みの親である故 宇良武一氏のお弟子さんでいらっしゃいます。西川さんに、まずは天満切子の生まれた経緯をおうかがいしました。
【切子工房昌榮】一口ビールグラス
天満切子の歴史

天満切子とは、名前の通り大阪の天満で生まれた工芸品です。歴史はまだ浅く、生まれたのは22年ほど前です。
大阪の硝子の歴史は、江戸時代、天満で始まったと言われています(大阪天満宮正門脇には「大阪ガラス発祥の地」の石碑があります)。
数十年前まで、天満界隈には多くの硝子工場や切子屋が立ち並んでいましたが、昭和50年ごろから徐々に衰退していきました。
そのような状況の中、「大阪の硝子文化をもう一度復活させたい」という宇良氏の熱い思いから生まれたのが天満切子です。
【切子工房昌榮】一口ビールグラス
鑑賞の美と用の美 天満切子

薩摩切子や江戸切子とは違う独自の魅力をと、試行錯誤の末に生まれたのが天満切子の特徴である、U字型(蒲鉾型)のカットです。
薩摩切子や江戸切子のようにV字型にカットするのではなく、蒲鉾型に削ることで、カットの丸みがレンズの役割を果たし、底のカットを側面に反射させます。
その姿はまるで万華鏡のよう。中に飲み物を入れると、一層輝きが増します。
天満切子の特徴は、鑑賞の美と用の美を併せ持つこと。
横から見たシャープな模様と、上から覗き込んだ時のカットの映り込み、そして飲み物を注いだ時のキラキラした美しさ。
場面によって違う姿を発見できるのも天満切子の魅力です。

天満切子ができるまで

天満切子の製作は、最初から最後まで全て手作業。
昌榮で使用している色被せ硝子は、北海道や千葉などの硝子工場の職人による手作りの硝子です。分厚い色被せ硝子を作るのは、とても技術がいることで、腕のよい職人にしかできない技だそうです。
色被せ硝子に、まずはカットを入れる部分にペンで線を引いていきます(割り出しと呼びます)。
それから割り出しの線に沿って、基準となる線を彫ります。カットにはダイヤモンドホイールを使用します。
この時に一緒に底面も彫ります。
(底面の模様は、様々な模様を試した末に、「一番シンプルで映り込みも美しい」という理由から現在の菊模様が多くなっているそうです。)
その後は線を太く、さらに太くと彫り進めていきます。
カットができたら、削った部分を砥石で滑らかにしていきます。
【切子工房昌榮】一口ビールグラス
砥石をかけ終わると、最後は磨きの作業です。
西川さん曰く、「写り」を重視する天満切子だからこそ、最後の磨きの工程こそ「肝」だとのこと。
様々な粗さの土を配合して作られた泥を付けながら、円盤型のコルクを回転させて磨いていきます。泥の配合やコルクの回転速度は、職人さんが長年の経験で身に着けた感覚を頼りに行われます。
磨きの作業の途中でも、磨き残しが無いかと何度も点検が繰り返され、一点のくもりもない硝子に仕上げられていきます。

職人技の結晶

こうしていくつもの工程を経て完成したグラスは、まさに職人技の結晶。程よい重みが手に心地よく、上質なひとときを演出してくれます。
大切な方へのギフトにもおすすめの逸品です。

ご使用上の注意
電子レンジ、食洗機、熱湯でのご使用はご遠慮ください。
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