くらしのこみち

【安and堵】育てる手ぬぐい

今月のお道具
2023.6.30
暮らしに溶け込む 育てる手ぬぐい

蒸し暑い日本の夏の季節に昔から重宝されてきたのが、手ぬぐい。
包む、拭く、巻く、敷く…手ぬぐいの役割はそれだけではありません。
夏場の季節には、水に濡らして首元に羽織ると冷たさが続き、体温を下げてくれます。タオルの代わりに汗を拭いても、生地が切りっぱなしなので、糸のほつれ先から乾いていきます。
冷房がきいた部屋や肌寒いときには羽織るだけで、暖かく包み込んでくれます。夏だけでなく用途に合わせて一年中使えるのが、手ぬぐいの魅力です。
【安and堵】育てる手ぬぐい
夏の暑さに涼しげな藍色が映えます。
日本の伝統的な染色技法、藍染。人工の染料を使わず「天然藍」にこだわり、
天然の染料で染められた手ぬぐいがこちらです。数多くのクリエーターが手がけたデザインと天然藍がコラボし、デザイン事務所と染色会社双方のものづくりの現場から生まれた手ぬぐいブランド「安and堵」。
アーティストが手がけた繊細な数々のデザインを細部にわたり緻密に表現した手ぬぐいはどのように染められているのでしょうか。今年4月、「安and堵」の手ぬぐいを染める京都の染色工房・藤田染苑を訪ねてきました。
【安and堵】育てる手ぬぐい
工房には数々の型が所狭しと置かれていました。こちらの型を作業台にあて、専用のヘラを滑らせて藍を染めていく技法「藍捺染」は、世界初の独自技術です。作業台の長さは、全長およそ26mほど。油など不純物を取り除き、染色しやすいよう糊抜きされた真っ白な伊勢木綿の生地が作業台に地張りされ、職人がヘラを滑らせると鮮やかな藍が浮かび上がりました。単純な動作に見えますが、型がずれたり力の加減を間違えると色むらができてしまうため、一枚一枚神経を使いながら丁寧に捺染されていきます。従来の藍染の手法である浸染では不可能であった、細かな線や藍の濃淡や深み、白地への模様染など、繊細なデザインを細部まで表現可能にしたのが、「藍捺染」の技術です。この日、捺染していたデザインでは、天然藍の他にも天然染料を使用していました。藤田染苑では、酸化と還元の技巧を応用した建染と呼ばれる手法で藍染が行われています。染料をアルカリ性に還元し、染着した手ぬぐいを空気と触れさせることにより酸化し、天然藍そのものの色合いを出していくのです。
【安and堵】育てる手ぬぐい
藍は水に溶けにくい上、温度や湿度により染まり具合が変わるため、扱いが難しいもの。
藤田染苑は、長年研究を重ねられ、多彩な柄を安定して染め上げられるよう改良し、藍染の可能性を広げられました。その確かな技術は、世界のデザイナーやブランドからも認められています。
この日捺染されていたデザインは、グラフィックデザイナー石田尚史さんの新作手ぬぐい。
藍だけではなく、新作の手ぬぐい2種類に使われている差し色「黄色」も天然染料です。
黄色は槐(えんじゅ)と呼ばれる木を原料に、鉄成分とともに媒染させる(生地に染料を定着させる)ことにより、色が分離することなく手ぬぐいに馴染んでいきます。
【安and堵】育てる手ぬぐい
分業制である京都の染色加工業。捺染された手ぬぐいは、蒸し屋に運ばれ大きな蒸し箱でおよそ80度の温度で蒸されると写真のように鮮やかな藍色から深い緑色へ変化します。空気に触れさせ、水で洗う工程を経て美しい藍の色へと変化していきます。自然の力が育んだ藍はまさに不思議な生きもののようですね。

天然藍なので色落ちはしますが、手洗いとともに落ち着いていき、伊勢木綿の柔らかくふんわりとした風合いともに生まれ変わっていきます。色落ちが落ち着いた手ぬぐいは、新品の手ぬぐいとは全く異なる藍の淡さとすっと肌に馴染む木綿の柔らかさへ。使うたびその人自身の好みに合わせて、手ぬぐいも育っていきます。

伝統的な京友禅の技法を残しつつも新たな染色手法や、天然染料にこだわった媒染など、「どこにもないものを」という染物への熱意と日々新たなる探究心を持たれながら、モノづくりに専念される藤田染苑・藤田社長のお話に私たちスタッフも目が釘付けになりました。
今月末のイベントでは、職人の技術と美しい天然藍が描き出した数多くのデザインの手ぬぐいをぜひ手に取ってご覧ください。

■使用上の注意
・染色の特性上、染めムラや色落ちがある場合がございます。
・色移りの恐れがございますので他の物と分けてあらってください。また、洗濯後は色移りを避けるため早めに干してください。
・タンブラー乾燥のご使用はお控えください。
・日本手ぬぐいは上下切りっぱなしです。使用するにつれ、ほつれは止まっていきます。
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