TORADITIONAL STANDARD

KUSKAとの出逢い

Item Story 【KUSKA】
第2話
2023.3.2
それは突然の一報から始まりました。
「銀座に良いネクタイがあるぞ。見に行ってみたら?」

ある方からの電話を受け、翌日には出張に出ていました。
教えて頂いた店に入り、それらしきコーナーへ行くと、それはすぐに分かりました。

インポートにはない美しさがあり、自分の理想を言葉では表現出来なかったので、誰かに頼る事も出来なかったのですが、自分の理想通りのネクタイがそこに並んでいました。

シルクの美しさと、織りの立体感があり、Vゾーンででしゃばる訳ではなく、かといって埋没するわけでない。
日本人の「わびさび」の感性にあたるつつましく、質素なものにこそ趣があると感じる部分や、時間の経過によって表れる美しさを感じるといった独特の美意識を、見事に表現されていると感じました。

すぐにどこで作られているかを調べたら、その場所は京都府 与謝野郡 与謝野町。
そしてすぐに電話でアプローチ。

「探し求めていたネクタイがこのネクタイです。どうしてもお店で展開したいので、一度工場にお伺いさせてください」と伝えると、KUSKAの楠社長は、「ぜひお越しください」と、快諾してくださいました。
KUSKAとの出逢い
車で向かうこと、片道4時間半。
朝7時半に出発して、工場に着いたのは12時過ぎ。

工場に着くと、その裏手にはすぐに日本海が見えました。

KUSKAは、絹糸の生産、染色、手織りの機織り、人の手による縫製の工程の全てを、京都で行います。

染色も、着物も染める丹後の職人が、ゆっくりと日本製のシルク糸を染料に浸けて染めていきます。高度な技術を持つ職人の経験と感覚で適度な温度と時間をかけて染上げたシルク糸は、独自の光沢と、しなやかな質感が生まれます。
染料は着物を染める染料を調合し、1点1点すべてがKUSKAのオリジナルカラーで染上げられております。
その後、ゆっくりと染め上がったシルクを一昼夜乾燥室で乾燥させた後、さらに常温でも乾燥させることにより色をしっかりと馴染ませることができます。
KUSKAとの出逢い
そうして、手織りによって作られた特殊なKUSKAの生地は、機械では縫製が出来ません。熟練の職人が布をカットし、表地で芯地を包み優しく手で撫でながらネクタのカタチを作り、1針1針ゆっくりと手縫いをしていきます。

特にフレスコ生地はメッシュ組織の為、ネクタイ中でも一番縫製が難しく、丁寧な仕事と熟練の技が必要です。

そのような一連の工程を、目の前で見せて頂きました。

現代の機械では作ることの出来ない、繊細で複雑な生地なので、楠社長が自ら作った木造の機織り織。ものすごく大きいです。「え?この織機作ったのですか?」と、まずはそれに圧倒されます。

それを熟練の職人さんが、自身の両手両足を駆使して、ギッコンバッタンと生地を織っていきます。
その時の糸や気候、気温によって同じものでも織り方は変わるようで、 腕、足、目、感覚、全てを使いないがら職人さんはゆっくりと素材にストレスをかけないように糸を織り込んでいきます。

それはまるで、鶴の恩返しの世界。
KUSKAとの出逢い
そのため熟練の職人でも1日にネクタイ2~3本分程度しか織る事ができません。
KUSKAの放つわびさびを含んだ美しい世界観は、超非合理的の先端にこそ作られるのだと、心底実感した瞬間でもあります。

そうして、手織りで立体的に織られたシルクは、光によってその表情を変え、ストレスをかけずに空気を含みながらゆっくり織られたからこそ出せる、機械では出せない独特の光沢を放ちます。

その時に織り上げられた生地を見せてもらった時、思わず「うわぁ~!!」と声が出ました。
これまで、ネクタイでは見たこともないような美しいブルーの生地。
まるでブルーサファイアのように見えました。
それが「丹後ジャガードの丹後ブルー」の生地である事は、後から知る事になります。

この時点で、どうしても我慢できなくなったので、「社長、このネクタイ扱わせてもらえませんか?絶対に大切に扱います。途中でやめたりしません。トラディショナルスタンダードがある限り、ずっと展開しますので、お願いします。」と伝えました。

楠社長は「もちろん、お願いします。ここに来てくださると聞いた時から、お取り組みをお願いしようと思っていました。」と仰ってくださいました。

このネクタイが取り扱える事がめちゃくちゃ嬉しかった事を、今でも覚えています。
あの時、織り上がった生地を見た時の感動を、今でも覚えています。

生涯、忘れる事はないでしょう。
KUSKAとの出逢い
Traditinal StandardがKUSKAと共に歩み丸5年が経ちました。

今では海外にも進出するブランドになり、英国の有名な老舗テーラー「Huntsman」でも扱われる一流ブランドです。

今も変わらずお客様にご好評を頂いており、成人式、卒業式、最終面接、入社式、重要な会合や会議、商談、そして結婚式など…。
ありとあらゆる重要な場面において、KUSKAのネクタイは選ばれます。
日本人的な美意識を満たし、好印象を与えてくれる最高の味方。

今でもKUSKAだけは、店舗でもディスプレイを分けて、単独で展開コーナーを作り、大切に扱っていますので、きっと皆様の目にも留まることだと思います。
戻る