よろずを継ぐもの

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見上げればうろこ雲

空を見上げる、雲にならう
第1話
2022.9.26
文章の書き出しってどれだけ自分に言葉の引き出しがあるか試されているようで、いまだに私は慣れませんし、とても苦手です。
でもそんな文章の書き出しについてとても素敵な思い出があるんです。秋口に遠く高い空を見上げながら「見上げればうろこ雲」そう呟くとすぅっと心が洗われて身体の中を軽やかな鼻歌が駆けめぐるような、そんな素敵な思い出が。
見上げればうろこ雲
見上げればうろこ雲

20年ほど前の話、社内用の原稿を書きながら、出だしがありきたりで毎度ワンパターンの私が先輩へ助けを求めた時、さらさらと赤ペンで書いてくれた書き出しがこのフレーズです。今思えば、描きなれていない本文に対して、センスの光る出だし(だけ)がなんともアンバランスな原稿だったのではないかと少々気恥ずかしくもありますが。それでもその先輩が引き出しの中からそれはそれは綺麗なフレーズを書き出してくれた、その事がとても嬉しく、ますます憧れ感を強くしていったあの日の出来事は、今も忘れられない1ページになっています。

季節ごとの雲のかたち、それは季語としても使われる情景の含みをもった美しい言葉。あの日の素敵な書き出しをプレゼントしてくれた先輩のように綺麗な言葉を引き出しにおさめておきたい。そんなことを思いながら、季節の雲をひとつひとつ学んでいきたいと思います。

見上げればうろこ雲

うろこ雲

秋を代表する、澄んだ青空にぱぁーーっと広がる鱗状の雲たち。 高い空に薄く細かく広がる鱗のような雲を見上げれば秋の空気を噛み締めつつ、この季節の美味しい味覚やらをついつい思い返してしまいます。

ちなみに少し似ているものの、もっと低い高度でもこもこした雲を羊雲と言うそう。うろこ雲よりぬいぐるみみたいな可愛らしい見た目です。想像ですが‥たぶんこちらの羊雲は綿飴みたいに食べたら少し甘いと思います。(あくまでも想像です)

周期的に天気の変わる秋は「うろこ雲が出たら3日のうちに雨、羊雲が出ると翌日雨」ということわざもあるくらい多様な空模様となりますが、これぞ秋晴れと言われる澄んだ青空と雲がふわふわ浮かぶそんな秋の空を見上げないなんてもったいない!忘れがちな秋の楽しみ方を今まさに噛みしめています。

見上げればうろこ雲

龍のようなうろこ雲 ~自由な雲を探して~

あーあ… 雲はいいよなぁ… 自由で… / 奈良シカマル(出典:NARUTO)

少しつらさを感じた時、壁にぶつかった時、私はこの言葉を思い出して空を見上げるようにしています。青く澄んだ空や、面白い雲が浮かぶ空、時にはぱらぱらと目に向かって雨を降らせる分厚い雲に覆われた空の時も。
空を見上げたからと言って、状況が良くなるわけでも、心が軽くなるわけでもないのですが、張り詰めた気持ちをシカマルのように少し解き放ってみようと、そんな風に思って空を見上げるわけです。「こんな沈んだ気分なのに、よくも空は晴れ晴れしているなぁ」「人の気持ちを逆なでするかのようなどんより雲だなぁ」「(大きな雲の中で落雷が光っているのが見えて)私なんか比べ物にならないくらいに過酷そうな状況だな」などと自分と雲を客観的に見つめてみるだけ。心の中で悪態をつき、皮肉を利かせ、たまに同情してみるだけ。思い起こせば負の言葉を空に向かって解き放つことが多いかもな。
だけど「見上げればうろこ雲」の日だけは全く違う心境です。もやもやしていても泣きそうな日でも、秋空に広がるうろこ雲を見たときだけは先輩の笑顔を思いだし、勇気づけられる気がするのです。
雲の種類を覚え、詩を聞き、ポジティブな空散歩を皆さまもご一緒にいかがですか⁉ふとした時に、空を見上げて自由な雲に想いを馳せてみませんか?
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