よろずを継ぐもの

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刺さる言葉 欲する言葉

寺社の掲示板
第1話
2022.5.31
いい言葉に出会っていますか?座右の銘や忘れられない言葉、本を読んで感銘を受けたエピソードなど、言葉は心を動かし、行動をも変えていく、ひいては人生すら左右するもの。いい言葉にいいタイミングで出会う事で、ほんの少し生きやすくなるのかもしれません。
毎朝通る神社の前でできるだけ「今日もよろしくお願いします」と挨拶をするようにしています。神社を通り過ぎ、あぁ私もそんな年になったんだなぁ…などとふと信号待ちしながら橋から見える鳥や魚や亀を探し、今度は見つけたこれらの名前を知らない事に気が付いて、私もまだまだだなぁと思い知らされるのです。
寺社の前できちんと挨拶するようになったのはここ数年の話。
心の中で挨拶してみたり、声に出して伝えてみたりその日の気分や急ぎ具合によってまちまちですが、自分や家族の健康をなんとなくよろしくと伝えたくて。
そんな風に挨拶するようになってはじめて、ふと目に飛び込む寺社の掲示板に書かれた言葉の温かさに触れることがあり、たまたま通りがかってなんとなく気になった時にだけ掲示板を確認するようになりました。


― やまない雨はない
  とかじゃなくて
  今降ってるこの雨が
  もう耐えられない
  っつってんの
  アニメ・イラスト作家 谷口崇 ―


以前SNSで見かけたこの言葉。
その時は言葉自体にはあまりピンときていなくて、どちらかというと言葉に添えられた岸部一徳風の癖になるイラストが目に焼き付いていました。しかし数年後、まさに「いまこの瞬間が耐え難く、助けを求めたいが周囲に心配をかけたくない、だけど我慢を押し込める心のゆとりはあと数ミリも残っていない」そんな時が私に訪れました。そして気分は落ち込み、気を張っていても涙が落ちるそんなナーバスな日々のなか記憶の片隅にあった岸部一徳風のおじさんの顔と鮮烈な言葉がよみがえったのです。

今かけてほしいのは気休めの言葉じゃない。
今必要なのは耐えれば、我慢すればの根性論でもない。
ただただ認めてほしい、共感してほしい、肯定してほしい。
平気なふりをするのも疲れるし、どん底の中あれこれ暗いことを考えてしまう事に飽き飽きしたその頃に私の腹の中から出たような愚痴のかたまりのようなもの。
しばらくは携帯の待ち受けに設定して、もやもやが溢れそうになったら岸部一徳風のおじさんと言葉を心の中でなぞり、ふっと笑って携帯をしまう日々が続きました。
刺さる言葉 欲する言葉
今回ご紹介するべくアニメ・イラスト作家 谷口崇さんのこの言葉を改めて調べたところ、なんと広島のお寺の掲示板で紹介されたというじゃないですか。
情報がすさまじい速度で流れるSNSでは、なにゆえ情報量が膨大なので「言葉との運命の出会い」を実感することはなかなか難しいかもしれません。でも人との出会い同様に、私たちは必要な時に必要な言葉に出会っているのではないか?と思い知らされたような気がするのです。そう思うようになって気が向いたときには、寺社の掲示板を探してみましょうとなったわけなのです。挨拶だけで掲示板の事などすっかり忘れていることも多く、きっとそれはいま私に必要な言葉ではないから、私に向けた言葉は書かれていないからと思うようにしています。
刺さる言葉 欲する言葉
現代生活に疲れた心に染み入るありがたいお言葉や、偉人の言葉の引用、最近では人気漫画の名台詞まで通りを行き交う人々へ問いかけ、心を癒す、そんな寺社の掲示板。
今を生きる人として共感や寄り添う気持ちを言葉に込めて声をかけあいたい。
そんな言葉を一緒に探してみませんか?
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