よろずを継ぐもの

  • ログイン
  • カート

はじまりのしろ

大和言葉と色のたしなみ
第1話
2022.5.31
ほんの少し立ち止まって、目の前の景色に何が見えるかじっくりと見てみると心の色まで見えてくる。だからこそ愛すべき世界は色彩で溢れていて、その色彩ひとつひとつに人の想いや願いが見て取れるのだと思うのです。
世界は色彩で溢れています。 新聞やテレビといったマスメディアからSNSまで情報という情報が世界に溢れているのと同じように、私たちの目には視覚情報として様々な色彩が飛び込んできて消費されている、情報と共に猛スピードで私たちの前を通り過ぎ、それはまるでなかったもののように思えてしまうくらいに当たり前に。


はじまりのしろ
ほんの少し立ち止まって、目の前の景色に何が見えるかじっくりと見る機会は誰にでもあります。久しぶりに帰省した田舎や旅行先、大好きな人と行くレジャー施設、子供を初めて連れて行く公園、1年に1度私たちの目を癒してくれる桜や紅葉の季節など。
美しい景色や感情をともなう情景を目の前にした時、私たちはそれをいつまでも色褪せない思い出となるように目に焼き付けておきたいと、お腹いっぱい空気を吸い、耳をなでる言葉を心の中で反芻し、目の前に広がるひとつひとつをメモリ容量いっぱいに記憶しようとします。そうする時と同じように目の前の世界の色を感じ取るという事は一時的に感覚を研ぎ澄ましてみる、当たり前に無意識に流れていく目の前の景色に意識を集中してみる事なのではないかと思います。ただ目の前の現実世界だけでなく、そこから広がる個人個人の思い出や記憶、感情とも関連づいて、「いまこの世界で生きる私」を客観的にタグ化する作業のようなもの。そんな風に私は思っています。


はじまりのしろ
マーケティングやデザインの世界ではしばしば色彩心理学をもとに、「どんな対象者にどんな印象を与えたいか?」次第で色を使い分け精神に及ぼす効果を期待します。例えば衛生的な印象を与えたい医師の白衣は「白」、癒しを印象付けたい病院の待合室は「ミントグリーン」、空腹を刺激したいファーストフード店のロゴは「赤・黄」など。そんな風に普段目にする世界で認識できる色やその色を感じる時の自分の感覚を認識してみる時、ちょっとおもしろい発見や、気づきを得ることができるかもしれません。

いま世界的に流行している疫病から苦しい思いを抱えている人は少なくないと思います。 そんなここ最近の耐え難い日々やほろ苦い昔の思い出を思う時、心のイメージ色は暗く濁ったグレーに染まっています。 しかし疫病の流行がダウントレンドへと移行し徐々に日常生活が戻り始めれば、きっと心のイメージ色も楽しく充実していた思い出と同様に希望溢れる鮮やかな黄色や赤に染まることでしょう。だからこそファッション業界ではいまカラフルなアイテムが提案されていて、鮮やかでにぎやかな感情を1日も早く取り戻してほしいというデザイナーからのメッセージを感じます。

今日はどんな気分で、どんな色を欲するのか。 何色にどんな想いを託すのか。そんな風に色を選んで、自らの感情をほんの少しコントロールしてみる。位を表したりゲン担ぎをしたりとはるか昔から色に託した意味や願いは存在し、それは今も私たちが自然と想いをのせているのかもしれません。 意識するかしないかだけの差なのかもしれない色彩というものについてこれから「おさらい」する感覚で調べていきたいと思います。


はじまりのしろ
そこで初回は「はじまりの白」
この世界に誕生した新しい命を包む産着の白
人生の節目となる日に着用する制服やスーツの中に着るパリっと糊のきいた白
新しい人生のスタートとなる結婚式の白
白の放つ緊張感
白の放つ潔さ
白の放つ鮮烈な光
白の醸し出すお日様のような温もりと香り
スタートを決意させる色、過去に区切りをつけて再出発するリセットの色、純真無垢で、汚してはいけない色、神聖な物を象徴し邪気を払うとされる色。 光のシンボルでもある白は幸福や成功へ導くとも言われています。
どんな色にも合わせやすいことから協調性や柔軟性も示し、1点の汚れも無い白を着こなす方をお見かけするとその方の丁寧な暮らしぶりが透けて見えるような、どこか心地の良い人柄を想起させてくれます。

この『よろずを継ぐもの』のスタートに背筋の伸びるような緊張感とこれからの期待を込めて。はじまりの白を贈ります。
戻る